[vol.1]ニッチテクニカル – HDMIケーブル一本でアルファ表示する方法 –

テクニカルディレクターによるマニアック技術コラム

このコラムはAZAのテクニカルディレクター 木村 壮平が映像、音響、ネットワークに関する様々な情報発信をしていく記事です。

第1回テーマ
『HDMIケーブル一本でアルファ表示が可能なのか?』

RolandのGraphics Presenterを使えば可能です。

映像の現場では、アルファデータの動画や静止画を扱うことが多いと思います。ただし、接続時にFill/Keyソースに分ける必要があり、設定が複雑になったり、ケーブルも2本必要になります。
もし、これがPC一台とHDMIケーブル一本で可能になれば、よりコンパクトになりますよね。

それを実現するのが、Rolandの「Graphics Presenter」というPCソフトです。
Rolandのスイッチャーで使用でき、さらに無料で利用できます。

Graphics Presenter

Graphics Presenterは、Rolandのスイッチャー、AVミキサー専用のタイトル/グラフィックス生成ソフトウェアです。
Roland独自の技術により、HDMIケーブル1本で接続するだけで、対応するRoland製スイッチャー、AVミキサーに合成用のFillとKey信号を送信します。

※Rolandホームページより

Graphics Presenter+Roland V-160HDで検証

今回、Graphics PresenterをインストールしたPCとV-160HDを接続し、動作を確認しました。

「Graphics Presenter」の操作画面

説明書通りに設定を進めると、写真のようにアルファデータを正しく表示できました。

アルファキーで抜けた状態

従来のクロマキーを使う場合、グリーンの色が使えなかったり、エッジがきれいに抜けないことがあります。
しかし、アルファデータには透過情報が含まれているため、とてもきれいに抜くことができます。

また、素材側のオペレーターの操作に関しても、クロマキーの場合はPower Pointなどを使用することが多いですが、Graphics Presenterでは画像の一覧表示ができるため、操作性が向上します。スイッチャー側の操作はDSKボタンを押すだけなので簡単です。

Companionとの組み合わせで操作性をさらに向上

Graphics PresenterをインストールしたPCとV-160HDをLANで接続し、Stream Deckでコントロールできるようにします。
Graphics Presenterは現状Companionにプリセットボタンがないため(2025年3月現在)、Vicreo Listenerというアプリを介してショートカットボタンを割り当てています。(例 Alt+EnterでON AIRのON/OFF)

Companionの設定画面

オペレーターにとっては、マウス操作の煩雑さがボタンに置き換わることで操作がしやすく、PCが離れた場所にあっても問題ありません。
さらにVicreo Listenerを使うことでStream Deck本体の設定ではなく、Companionにすべての設定を統一できます。

Companionを使ってGraphics PresenterとV-160HDを操作することで、二つが連動させた動作が可能になります。最後の動画ではカメラ→スティンガー→スライドの切り替えを、二つのデバイスを同時に操作して実現しています。

Graphics Presenterは多くのメリットがあるソフト

Graphics Presenterは、現場ではまだあまり見かけませんが、今後普及が進めば、アルファデータのために大型の機材を準備しなくてもPC一台で対応できるようになります。また、急な変更にも柔軟に対応できるなど、多くのメリットがあるソフトではないかと思います。

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登場した機材

今回の検証で使用した機材は全てレンタルを行っております!

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記事を書いた人

木村 壮平

2007年入社 テクニカルディレクター|長年テクニカルオペレーターとして様々な現場で活躍。現在ではテクニカルディレクターとして高度な技術が求められる大型案件のシステムディレクションを行う。社内の技術アドバイザーとしての役割も担っている。