[vol.2]ニッチテクニカル – 未来のオペレーションを変える視点 –

テクニカルディレクターによるマニアック技術コラム

このコラムはAZAのテクニカルディレクター 木村 壮平が映像、音響、ネットワークに関する様々な情報発信をしていく記事です。

第2回テーマ
未来のオペレーションを変える視点 - スマートグラスが切り拓く新しい現場体験 -』

「もし、目の前に操作画面が浮かび上がり、ステージを見ながら直感的に音響や映像を操作できたら?」

そんなSFのような体験が、いま現実のものになりつつあります。

今回は弊社のレンタル商品ではありませんが、スマートグラス「XREAL ONE」を使いながら、未来のオペレーション像を実機ベースで掘り下げていきます。

XREAL ONE

中国AR企業XREAL社が2025年1月に発売した最新ARグラス。
AR業界初(XREAL社調べ)の自社開発空間コンピューティングチップ「XREAL X1」を搭載し、3DoFを用いた固定大画面体験などの処理を、外部デバイスに依存せずグラス単体で実行可能。

スマートグラスで“見る操作”ができる世界へ

従来のオペレーションでは、PCや専用機器の画面を見ながら操作を行うため、視線を頻繁に動かす必要がありました。
スマートグラスを使えば、視界の中に操作画面を浮かび上がらせ、ステージや対象を見ながらの同時操作が可能になります。例えば、コンサート会場の舞台裏。スマートグラスをかけた音響オペレーターは、目の前に浮かぶ操作パネルを操りながら、ステージ上のアーティストの動きに合わせてリアルタイムで音響を調整しています。これにより、瞬時の判断と正確な操作が可能になり、観客は最高の音楽体験を享受できます。

その結果、オペレーターの負担は軽減され、判断スピードや操作精度の向上が期待されます。

 実例:XREAL ONE×PC で空間に操作画面を表示

今回は「XREAL ONE」というスマートグラスをPCにType-Cケーブルで接続し、実際にどのような使い方ができるのかを検証しました。

システム図
視界イメージ
装着イメージ
  • 接続方法:Type-Cケーブル一本で映像出力&給電
  • 表示モード:PCのミラーリング/拡張ディスプレイの両対応
  • カスタマイズ性画面サイズ・透過度の調整が可能

VMIXを起動してのテストでは、画面は想像以上に鮮明で、透過先のステージや背景も視認可能でした。画面を移動させたい時は表示位置を端の方に移動も可能です。

現在はマウスやキーボード、Streamdeckといった入力デバイスが必要ですが、今後Apple Vision Proのようにジェスチャー操作が可能な製品が主流になれば、さらなる進化が期待できます。

Meta社の開発する「Orion」は、腕に装着するバンドでの操作が可能とされており、入力方法の多様化も進んでいます。

応用:物流・商品管理への展開も視野に

この技術は、オペレーションの現場だけでなく物流・商品管理などの分野にも応用可能です。
社内テストを行っていたところ、物流チームから「商品のピックアップや出荷作業に使えそう」との声も上がりました。

たとえば——

  • ■必要機材リストをAR上に表示
  • ■機材の位置案内やルート表示
  • ■数量確認やQRコードの読み取り
  • ■作業中のチャットや指示内容のリアルタイム表示

といった活用により、現場作業の効率化とヒューマンエラーの削減が見込まれます。

現在の課題

とはいえ、現段階でのスマートグラスには課題も残されています。

  • 画面解像度の粗さ
  • バッテリーの持続時間
  • 完全ワイヤレス化の未実現
  • 長時間装着時の快適性

これらは今後の技術進化によって改善が期待される点であり、すでに各社が積極的に開発に取り組んでいる状況です。

おわりに

「見る」「操作する」「考える」が同時にできるスマートグラスは、オペレーターにとっての大きな武器になり得ます。
今はまだ発展途中ですが、だからこそ現場のリアルな声を取り入れながら活用方法を探っていくことが重要です。

これからも現場視点での実験とフィードバックを繰り返し、未来のオペレーションスタイルを現実のものにしていきたいと思います。

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記事を書いた人

木村 壮平

2007年入社 テクニカルディレクター|長年テクニカルオペレーターとして様々な現場で活躍。現在ではテクニカルディレクターとして高度な技術が求められる大型案件のシステムディレクションを行う。社内の技術アドバイザーとしての役割も担っている。